どうもハチワレです。
今回は、事業協同組合などで組合員の脱退の事務手続きを解説します。
3月、12月などは決算を迎える組合も多く、大変忙しい時期になると思いますが、そこに突然・・・
もしもし・・・株式会社Aです。
いつもお世話になっております。
突然ですいませんか、
3月末で組合を脱退したいのですが・・・
えっっ!マジっすか・・・
こんな連絡、組合の事務局をやっていると、よくある話です。
まぁ、組合組織というのは原則として加入も脱退も自由でければいけません。
組合員の突然の脱退は、認めらる行為でありますので、無理やり加入を維持させるような行為はやめましょう。
それでは、組合の脱退の手続きについて解説します。
- 組合からの脱退の相談を受けた組合
- 組合から脱退を考えている企業
- 組合の脱退に関する事務処理に悩んでいる方
- 組合の脱退で必要な書類がわからない方
脱退の種類
自由脱退
組合員が自分の意思で脱退をする場合(自由脱退)は、脱退を最低でも90日前には報告しなければならず、そして、脱退できるはその年度末となります。これは法律で定められています。
(自由脱退)
第十八条 組合員は、九十日前までに予告し、事業年度の終において脱退することができる。
2 前項の予告期間は、定款で延長することができる。ただし、その期間は、一年を超えてはならない。
中小企業等協同組合法
つまり、3月31日に脱退したい組合員は12月末までには予告をしておかなければいけないということです。例えば、3月10日に組合員から脱退の予告があったとすれば、その組合員は翌年度末に脱退することになります。
法定脱退
組合員の自由な意思ではなく、倒産などで脱退となる場合は法定脱退と区分されます。
(法定脱退)
第十九条 組合員は、次の事由によつて脱退する。
一 組合員たる資格の喪失
二 死亡又は解散
三 除名
四 第百七条及び第百八条の規定による公正取引委員会の確定した排除措置命令
五 持分の全部の喪失(信用協同組合又は第九条の九第一項第一号の事業を行う協同組合連合会の組合員に限る。)
2 除名は、次に掲げる組合員につき、総会の議決によつてすることができる。この場合は、組合は、その総会の会日の十日前までに、その組合員に対しその旨を通知し、かつ、総会において、弁明する機会を与えなければならない。
一 長期間にわたつて組合の事業を利用しない組合員
二 出資の払込み、経費の支払その他組合に対する義務を怠つた組合員又は第九条の十一第六項の規定に違反した特定組合員
三 その他定款で定める事由に該当する組合員
3 除名は、除名した組合員にその旨を通知しなければ、これをもつてその組合員に対抗することができない。
中小企業等協同組合法
組合の定款の第8条あたりに「組合員の資格」が明記されているので、その該当から外れた場合や除名などが法定脱退とされていますが、主に組合員の倒産や、個人事業主の場合は本人の死亡が法定脱退の9割を占めると思います。
法定脱退の場合は、予告も何も、その事実が確定した日をもって脱退となります。
脱退に関する文書の送付
組合員企業が組合の脱退について、提出する正式な文書というのはありません。法律で決められていることは「90日前までに告知すること」だけです。組合も組合員企業が脱退したことを、管轄する所管行政庁や、加入している都道府県中央会に都度報告する義務はありません。
ですが、組織対組織の契約に関することですので、文書で残す方法をした方が事後的な問題は少なくなります。
脱退予告書(自由脱退)
自由脱退の場合は最低90日前までに組合に告知する必要があります。そのため次のような予告書を作成して、組合に送付します。
\ ダウンロードできます /
脱退届(法定脱退)
法定脱退の場合は、事案が発生した時点で脱退となりますが、一応、文書で報告した方が双方の問題は少ないと思います。
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脱退確認書
脱退予告書や脱退届が提出されたら、組合も脱退確認書を送付して相互に脱退の共通認識を図りましょう。特に組合の場合は、自由脱退であっても法定脱退であっても「持分の払戻し」を計算して返金しなければいけません。年度末の決算の状況で金額の増減はあるかもしれませんが、重要なことは年度末の組合の財産を基に計算して、総会の承認を経てから返金する事務手続きであることを理解させることです。
企業倒産などで法定脱退となった場合、管財人から「出資金の返金をお願いします」と組合に連絡が来ることがありますが、その際は年度末の組合の財産で持分が算定されること、総会の承認で返金できるようになること、また、倒産した組合員に組合への債務があった場合は、出資金から相殺することを説明しましょう。基本的に管財人は弁護士の方となるので、了解してくれます。
\ ダウンロードできます /
突然の脱退予告への対応
自由脱退の手続きで、悩ませるのが、1カ月ぐらい前に「脱退したいです・・・」という告知です。
法律では「90日前までの告知」、定款によってはもっと前に設定している組合もあるかもしれません(定款が90日前を下まわるような場合はありません)。そのため、基本的には、そのような告知は突っぱねて、翌年度の脱退で問題ありません。
そうはいっても、苦楽を共にした組合員のたってのお願いとなると、組合の事務局も、理事や理事長も、何とか対応してあげたいと思うかもかしれません。
その場合は、組合内にはその手続きを組織の私物化として責任追及してくる組合員もいるかもしれませんし、所管行政庁へ報告して、組合に罰則をあたえ、役員や事務局を排除しようとする方もいるかもしれません。そして、以後、同様に突然の脱退も対応してくれると誤認され、同じようなことが繰り返されてしまい、収拾がつかなくなる恐れもあります。それらをすべて引き受ける覚悟があれば、突然の脱退予告をその年度末に処理してしまうことはできます。違反に対するルールとしてあるのは罰則程度です。覚悟をもってすればできないことではありません。
まとめ
組合からの脱退については、決められた文書の送付等のルールはありませんが、注意するべきは、90日前までの脱退の予告が必要であることです。
タイミングがズレてしまえば、双方にとってシコリが残るような後始末になってしまいます。組合は脱退を進めるようなことはするべきはないですが、数年に一度は総会などでしっかりと脱退をする際の告知について、周知をする方がいいかもしれません。または加入の際にしっかりと脱退の手続きも認識させることが大切です。